日本で「特定技能」が成立しましたが、送り出し国がそれに協力すると決まったわけではない

日本で「特定技能」が成立しましたが、送り出し国がそれに協力すると決まったわけではない

まだ動いてはいけません。

改正入管難民法が参院を通過して成立しましたが、制度の詳細は何も決まっていないに等しく、これから省令で決めていくとのことなので、早く動いて他の会社や他の人よりも先駆けて始めたい!というお気持ちはわかりますが、ここは気持ちを抑えて冷静に状況を見ていかなければと思います。

特に今まで中間支援団体であり、人材紹介機関のようでもある監理団体になれるのがほとんどの場合は組合だけでしたが、今回は一般企業でも関われるようになる可能性も多いので、そういう外国人を紹介する事業を検討している企業であればなおさら、今すぐに動いて、集客もして、他業種との競争になる人材を確保したいと思うのは当然です。

しかし、それは絶対にやめたほうが良いです。去年の介護の失敗がありますから。

あの時は本当に大変でした。私が当時働いていた送り出し機関も先走った組合や介護施設に協力して、介護の技能実習生数十人の日本語教育をしていました。介護は日本語能力N4で入国できますが、入国してから1年以内にN3を取得しないと帰国という制度ですので、日本の組合や施設、送り出し機関で、N3とれなかったら誰が責任とるか!?というようにモメていました。私のいた会社ではほとんどの候補者がN4に合格し、N3も数人合格しました。

モメ事はあったものの、入国させるための手続きに進もうとしているあたりで、「ベトナム政府は日本への介護の送り出しのライセンスを出さないらしい」というウワサが流れました。

送り出し機関の社長もそんなことは知らず、「そんなバカなことがあるか。そんなウワサを信じるな!」と言っていたのですが、「念のため…」と言ってベトナム政府の当局へ電話したところ、青ざめた顔で「ホンマや…」となりました。

あの時は私も当時の会社のベトナム人社長を連れて、介護で契約していた組合や介護施設に謝罪行脚をしてきました。会社の方も募集して教育して無駄な時間を過ごさせた介護技能実習生たちやその家族たちも怒っていたので、政府の結論がわからないので、故郷へ帰ってもらい、ライセンスが取れたらまた連絡するとなっていましたが、ほとんどの人はやめていったので、謝って手数料などの返したようです。

「OK!OK!」と言った送り出し機関だけでなく(そもそもベトナムの送り出し機関の「OK」「大丈夫」は信じてはいけません。)、日本側で制度ができる前からビジネスチャンスだとばかりに動きはじめた組合の責任も大きいです。しかも送り出し国側も自国の国民を海外で働かせるとなるとそれなりの制度が必要なので、そんな確認もせずに動き始めて、結果的に期待した介護施設にも迷惑をかけ(一緒に踊った施設も悪いですが)、その時点で1年〜2年も日本語を勉強させて結果的に日本に行けないという何千人ものベトナム人の若者を出してしまいました。

その後、13社か14社程度、試験的に介護の送り出しライセンスを出しましたが、ベトナムからは日本にはまだ30人程度です。フィリピンも介護での送り出しの許可をださなかったようですが、英語の使えるフィリピンへは北米やヨーロッパからの介護の良いプログラムがあり、日本にはほぼ来ることがないだろうといわれています。

ベトナムに関しては、1年前に数千人の日本行きを望んだ若者、しかも介護や看護の専門学校を卒業して熱意のある人も多く混じっていましたが、結局行けず、「日本に騙された」とSNSで拡散し、しかも送り出し機関が介護とは何かということを知らなかったのか、知っていたけど候補者を騙したのかわかりませんが、多くの送り出し機関のFacebookとかWebサイトでは、ナースのような格好をした写真を入れて、「日本でナースになりましょう!」的な募集をしました。候補者たちの多くは、ナースになるために日本語を一生懸命勉強していましたが、行けなくなった後、「本当はナースではなく、お年寄りの下の世話らしい」ということが拡散し、ベトナムの若者たちをさらに激怒させることになりました。送り出し機関の私が言うのも何ですが、介護は制度自体の問題が大きいですが、一部の先走った人たちのおかげで終わってしまった感があります。かなり制度を見直さなければ今後も無理だと感じています。少なくともベトナムでは。

特定技能に関しても先走ってしまえば数ヶ月後にも同じことが起きて、先走ってしまった自分が謝罪行脚したり補償地獄に陥るだけでなく、介護のように業界全体をオワコンにしてしまう恐れもあります。

そもそも今の時点ではどういった企業や団体が受け入れできるのか、登録支援機関になれるのかもわかっていません。先走って動いてしまっても、自分たちが登録支援機関になることができないことがわかり、違法ブローカーとならざるを得なくなってしまいます。

ベトナム側を含めた送り出し国側も同じです。日本が「特定技能やります」と言っていますが、送り出し国側でもやることが決まったわけではありません。ベトナムにしろフィリピンにしろどの国であっても、これに関わることで問題が想像つくことになれば、送り出し機関などにも特定技能に関わることを禁じる可能性もあります。

介護の場合は、1年以内にN3を取らなければ帰国という厳しい条件があったため、送り出し機関はN4で送り出して後は知らないというのがほとんどでしょうから、1年後には大量の失踪者が出ることはベトナム政府でなくとも想像できました。こんな話に乗ってこなかったベトナム政府は意外と機能しているなという感じがしました。フィリピンも人材の海外への送り出しが国の大きな事業のひとつなので、日本で変なトラブルに巻き込まれたら他の国への送り出しに関しても評判が悪くなると乗ってこなかったようです。

ベトナムもフィリピンのように人材の送出しを国のいち大事業になりたいようで、今は様々な国と人材の送り出しで契約していますので、日本語要件だとかが厳しく、何か問題があるとベトナムのせいにされてしまうので、特定技能も制度の内容次第ですが、わざわざ冒険してまで日本への人材の送り出しを禁じる可能性もないわけではありません。ベトナムは似たような制度があった韓国への人材の送り出しも禁止していましたので完全に安心というわけではないと思います。

ホテル・旅館向けの人材送り出し機関としてLADECOも一刻も早く動いて、4月にはたくさん送り出したいという気持ちもありますが、ここは抑えて冷静に状況を見ていきたいと思います。