なぜ宿泊業の特定技能人材は、外食業の15%しかいないのか

なぜ宿泊業の特定技能人材は、外食業の15%しかいないのか

外食業の特定技能取得者の人数は宿泊業の6.7倍

あるホテルの方が、特定技能は監理費もかからないし、日本語もできる人たちだから技能実習ではなく特定技能を採用したいという話を聞きました。

無知な業者や悪質業者から変な入れ知恵をされているのだと思いますが、宿泊業で特定技能は無理です。海外での試験体制が整っていないなどの環境的な問題もありますが、整ったとしても難しいだろうなと思います。

2019年の12月末での特定技能の受け入れ状況では、同じサービス業で技能実習2号の修了者のいない外食業と比較して在留資格が出ている人数は

宿泊業:15人

外食業:100人

となっています。

外食業は宿泊業の6.7倍程度います。それでは、試験の合格者も6.7倍程度いるかといえば、そうではありません。

 

【出入国在留管理局】特定技能1号在留外国人数(令和元年12月末現在)概要版

http://www.moj.go.jp/content/001313794.pdf

外食業の技能試験の合格者は宿泊業の2倍でしかない。

それぞれの技能試験の合格者人数を同じく12月末の状態で調べると

 

令和元年12月 出入国在留管理庁 特定技能外国人の運用状況について

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai6/siryou1.pdf

宿泊業:728人

外食業:1546人

です。外食業は合格者人数が2倍でしかありませんが、在留資格が出ている人数は6.7倍です。

マッチング率で言うと

宿泊業:2.1%

外食業:6.5%

とどちらも少なく、今月の日本語学校や専門学校の卒業後にどう伸びるかが注目ですが、現状は外食業は宿泊業の3倍のマッチング率となっています。

特定技能の宿泊業のマッチングが特に低い理由

まず、宿泊業、外食業ともにマッチング率が低い理由としては

・合格者の中にかなりの割合で人材紹介会社や送り出し機関のスパイが混じっている

・特定技能はレベルの低い在留資格なので、留学生は技人国の在留資格が欲しいため、滑り止めに受けている。

ということがあります。

次になぜマッチング率でこれだけ差がついたのかを考えてみたいと思います。

宿泊業の技能試験合格者が外食業の半分なので、マッチングも外食業の半分の50人程度はいなければ競争にならないわけです。それがなぜ15人しかいないのか。

宿泊業が外国人から「選ばれていない」という理由と、宿泊業が外国人を「選びすぎている」という両方の理由があると考えています。

宿泊業の特定技能が「選ばれていない」理由

技人国ではなく、特定技能を選んだとして、外食業と宿泊業両方受験し、両方合格した人は外食業を選ぶでしょう。理由としては

外食業は都市で給料の高い仕事が多いが、宿泊業は地方で低賃金

外食業は都会での求人も多く、給料も20万を超えている場合も多い。宿泊業は地方での仕事がほとんどな上、こちらの求人を見ても、20万をこえる求人はほとんどなく、下手すると技能実習生より低い条件で、N3でだいたい16~18万円が多く、中には13万や15万という低賃金の求人も多い。N2でようやく20万の求人が2つくらい。

「地方では生活費が安い」などという理屈は外国人には通用しません。家賃は田舎よりも高くつきますが、その分給料も高く、食費も山奥のスーパーよりも、東京のスーパーの方が実際は安いです。また、外国人はネットで安い食材を買うことも多いため、生活費は地方にいても都会にいても変わらないか、都会の方が安い計算になります。

交通費も田舎はちょっとバスに乗っただけで700円などかかってしまいますが、都会では200円程度の電車代でいろいろなところへ行けます。

外食業が「日本語を使える仕事」という認識に対し、宿泊業は「どうせ掃除の仕事」と思われている。

2年も4年も日本で勉強してきた人は日本語の使える仕事をしたいと考えています。同じサービス業でも外食は掃除などの仕事もありますが、ほとんどの時間は接客や調理です。

宿泊業でも多くの留学生はホテルでアルバイトをしていますが、だいたい掃除の仕事でその経験から、「ホテルの外国人の仕事は掃除などの日本語使わない仕事」というイメージがあります。

実際に私の知っているベッドメイキングのアルバイト経験のある留学生が、特定技能の試験に合格すれば仕事を紹介できると伝えたものの、「アルバイトと同じ掃除の仕事ですか?」と聞かれ、「それだったら絶対にイヤだ」と言っていました。

特定技能でも掃除に専従させることはできませんが、たとえ数時間だけでも「掃除」という仕事やゴミを扱う仕事は社会的な身分の低い人がやる仕事だと考えらえれているので嫌がられるでしょう。

掃除ばかりさせる業者も当然出てくるだろうし、そうすると余計に人気がなくなり現在よりも難しくなっていきます。

ホテル、旅館側が、特定技能外国人を「選びすぎて」いる

無知な業者の「特定技能だったら日本語レベルはN3かN2」という言葉を信じて、面接会などに行っても、「どうも違う」と感じるでしょう。

学生アルバイトたちでも日本語レベルが上の人もいるからです。そういう優秀なアルバイトは帰国したり技人国で別の業界に就職しますが、単純労働とされていて低い在留資格とみなされている特定技能に応募してくる人たちは、そういう人たちより日本語レベルは低い人たちです。

海外からの応募者に関しては、いくら大学で日本語学科を出ていても、日本人と話した経験がほとんどないため、会話はほとんどできません。

合格者の中には努力してN4に合格したばかりという人もまじっていますので、高い日本語力を求めるホテル、旅館側から見れば、日本語堪能で優秀だと聞いていたこともあり、そういう人たちは全く眼中にはなく、外食業と人数で差がついてしまったのではと思います。

この傾向が続けば、海外で試験が始まっても増えない

量ではなく、質を選ぶと考えるかもしれませんが、

「宿泊業の技能試験に合格しても、100人に1.5人しか就職が決まらない。」

「採用されても日本語のいらない簡単な仕事ばかり」

という悪い評価を得ることとなり、N4レベルでも採用する外食業と実績や就職後の評価で差がついてきますので、普通の人材も来なく、優秀な人材はもっと来ないことになります。

教育したうちの1.5%しか採用されない状況であれば送り出し国の政府自体が激怒して特定技能の試験を取りやめにする可能性もあります。ベトナムでなかなか技能試験が始まらないのは、「うちの国民の時間と労力を金を使わせて努力させるのだから、合格者全員を採用するように」という条件をつけられているのかもしれません。

ミャンマーで一度技能試験を行い、280名の定員のところ、238名程度が受験し、合格者が85人でて、面接会に30人くらい来てマッチングがどれくらいあったのかはわかりませんが、マッチング10%だとしても8~9人。努力して試験を行ったのは日本側だけでなく、ミャンマーのお役所も受験者も同じなので、試験の定員に対して就職できた人が3%程度しかいなければ、ミャンマー側で関わったすべての人の顔がつぶれるので試験も廃止でしょう。

送り出し機関としても100人教育して1.5人のマッチングでは全く仕事にならないし、「勉強したのに仕事が決まらない」などと言う悪評が立てば技能実習にも影響がでてきますので、参入しないところも多いのではと思います。

それでも宿泊業の特定技能を採用したい場合はどうすれば良いのか

現在は外食業でも宿泊業でも特定技能の試験に合格した人を探すのが困難です。特定技能をアテにしていた人材紹介会社としては候補者がいなければ仕事になりません。それでFacebookで「私は外食の特定技能に合格しました」と投稿があると、日本の業者がこぞって「仕事を紹介できます!」とコメントして奪い合い状態です。

このような環境の中で特定技能外国人を採用するには、

1.興味を持ってもらえる好待遇の求人を作る

2.その求人を持って技能試験の当日に試験会場に行ってビラ配りする

3.Facebookのコミュニティでこまめに求人を投稿する。

4.Facebookのコミュニティで、「合格しました」と投稿する外国人に自社アピールをする

などが考えられます。

人材紹介会社もこれ以外に候補者を募集する方法がないため、このようにしているところが多いです。人材紹介会社もこのような努力をしているから紹介料も安くはできないですし、自社でやれば紹介料いりませんが、募集できるかわからない状態の中で、多くの労力を割くことになります。

このような努力をしても採用できない、いるかどうかもわからない幻の「優秀な人材」を探すのではなく、原石の技能実習生を採用して育てていくことが現実的だと思います。

 

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E-mail: katoreiwa02@gmail.com(加藤)